鉄よりつよいもの。(旧)

KKTのブログ『鉄よりつよいもの。』のはてなダイアリー時代(2004年から2017年まで)のアーカイヴです。新規更新はしません。現在は新しいブログ http://kkt.hatenablog.jp/ をたまに更新

信じれないが

ハロプロを引っ張る一番の年長グループとなった℃-ute。8月の解散を発表して以来、初のリリースとなったシングル表題作3曲のうち『Singing〜あの頃のように〜』は、まさに℃-uteの――というよりはむしろメンバーひとりひとりが「これまで」を回想するような歌詞で、大きな区切りを前にしていることを実感させられます。
生ではないゆえにリズムパートなどの電子音と馴染みの良いオーケストラサウンドの生み出す心地よさや、スケールから外れた半音の音を使ったサビのメロディも印象に残るところなのですが、この曲で私が一番ポイントだと感じたのは「信じれないが」という歌詞の一節でした。
文法から言えば「信じられないが」が正しいですし、若い女性が歌う歌詞であれば「〜が」という言い回しは普通なら避けるところかもしれません。しかし、そこで「信じれないが」なところが、この曲を作ったつんく♂さんらしいところなのかもしれません。



そして、この「信じれないが」という一節は、ずっと見守ってきた人の心境でもあるのかもしれないと思うのです。

現時点でのハロプロでもっとも新しいグループとなるつばきファクトリーは、もちろん結成は知っていたものの、申し訳ないことになかなかその活動を観る機会がなく、オリジナル曲についてもほとんど知りませんでした。
それが、今年8月にYouTube公式チャンネルが開設され*1、ミュージックビデオが一気に配信開始となったことでようやく曲にきちんと触れる機会に恵まれました。
中でも『気高く咲き誇れ!』はハロプロ楽曲大賞に投票するくらい気に入っているのですが、『独り占め』もかなり気に入っている曲のひとつです。



無機的な反復するリズムを土台に、重なる音が徐々に情感を加えていき、湿り気全開のストリングスとボーカルが乗っていくというサウンドの組み立てが惹かれる部分。
なにより、イントロなどで聴けるギターのカッティングのサンプリングが、あえてフレーズをスムーズに繋げずに「プツッ」という繋ぎ目をフレーズの一要素として活かしてしまうという発想がすごいなと思うところです。


すでに2017年メジャーデビューも決まっているつばきファクトリーが、これからどんな曲を聞かせてくれるかが楽しみです。

*1:チャンネル自体はそれ以前から存在していたようですが、稼働しはじめたのは8月から

過渡期と予感

12月24日、吉祥寺CLUB SEATAで開催されたLoVendoЯのクリスマス・ライブ『LoVendoЯ ライブ 2016 X’mas〜LOVE LOVE LoVendoЯ〜』を観てきました。
9月のライブをもってギターの魚住さんがグループを卒業、3人体制となって初のライブは、田中さんのライブ当日のブログにも書かれているとおり、ドラムにミズキさん、ベースにZweiのMeguさんというお馴染みのサポートメンバーに加え、ギターにもじろうさんというサポートメンバーを迎えてのライブでした。
この「じろうさん」、ライブでもフルネームは紹介されていないのですが、たぶんLoVendoЯの2014年リリースのミニアルバム『不器用』から最新シングルまで編曲やレコーディングに参加している宮永治郎さんだと思います。
基本的に魚住さんが弾いていたパートをそのままサポートのじろうさんが弾くという分担になっていたと思います。


で、率直に書くと今回のライブは「過渡期のライブ」なのかなという印象を受けました。
魚住さん卒業後、まだ約2時間のワンマンライブをフルでやれるだけのLoVendoЯの新しいかたちを作りあげるまでには至っていなくて、だから初期からLoVendoЯに関わっていてLoVendoЯLoVendoЯの楽曲をよく知っている宮永さんをサポートに迎えて、4人体制時とほぼ変わらないかたちでやったのが今回のライブだったのかなと感じています。
そう思った理由はもうひとつあって、ギターの宮澤さんがブログで紹介していた新しいギター“仗助くん”が今回のライブでは登場しなかったんですよね。
このギターは新生LoVendoЯに向けて用意されたものなのかなと思っていたので、このニューギアが登場しなかったということは、まだ新生LoVendoЯが幕を開ける時ではないのかなと思ったりしたのです。


一方で、新しいLoVendoЯの予感も随所に見えるライブでした。大きかったのはライブ中盤『NUMBER(S)』で岡田さんがピアノを弾きながら歌ったこと。今回はこの1曲だけでしたが、ボーカル、ギター、ピアノというLoVendoЯのかたちも今後見られるのかと期待が膨らむところでした。
そして今回のライブでアンコールの最後に歌われたのは、ライブでの披露は久々となる中島卓偉さんのカバー曲『だけどもう一度 それでももう一度』。曲のラストで繰り返される「You can try again Try once more again」のフレーズは、これからのLoVendoЯ自身の「挑戦」の宣言であるようにも思えました。




ライブの前日に配信開始となったYouTube番組『アプカミ』第48回で少しだけ流れた、今回のライブでは披露されなかった岡田さん作詞作曲による新曲も、これからの新しいLoVendoЯを予感させてくれるもの。



2017年に本格的に稼働しはじめるであろう新生LoVendoЯがどんな色を見せてくれるのか楽しみです。

ハロプロ楽曲大賞2016

毎年恒例の『ハロプロ楽曲大賞'16』、今年も投票で参加させていただきました。
私の投票内容を記載しておきます。YouTubeに公式動画があるものは動画も貼っておきます。
(※日付は投票日の12月10日になっていますが、実際の更新は12月29日です)

楽曲部門

  1. 恋はマグネットカントリー・ガールズ:3.0ポイント
    キラキラしたシンセのサウンドやジャジィなギターのフレーズ、全体のリヴァーブ感などが1980年代サウンドを思い起こさせ、これまでカントリー・ガールズが歌ってきたオールディーズ・ポップス路線とは別の「懐かしさ」を感じます。もちろん、ただ懐かしいだけでなく、間奏では現代的なダンスミュージックのテイストが取り入れられているのもいいアクセント。「ユラリ」「フワリ」「キラリ」と似た響きを重ねて主人公の揺れる心理を表現した歌詞も素敵です。そして年長組と年少組の声の対比も含めたカントリー・ガールズのメンバーの声のバランスが曲の魅力を一層引き立てていると思います。
  2. 『The Visionモーニング娘。'16:2.5ポイント
    フィルターを通したようなピアノの音に乗り、効果音のような浮遊感のあるサウンドが飛び交う中で歌い出されるメロディは、どこか「まどろみの中で心に浮かぶ本当の気持ち」のように感じられます。そしてサビでクリアになった音の中で力強く歌われるのは、覚めても忘れることのない「決意」。
  3. 『Dream Road 〜心が躍り出してる〜』Juice=Juice:2.0ポイント
    冒頭からどんどんとかたちを変えていく音像空間。しかもいくつかのレイヤーに分かれて変化していくことで、まるで異なるいくつもの時間と空間が同時に存在しているような感覚を生み出している。そしてそのサウンドは、希望だけなく不安や迷いなど相反するいくつもの感情を同時に抱えつつも、凛々しく「夢を追え」と言い切る強さを象徴しているようにも思えます。それは「弱さを知った上での強さ」。
  4. 『気高く咲き誇れ!』つばきファクトリー:1.5ポイント
    冒頭のエフェクトがかかり左右に飛び交うボーカル、三連符を多用したメロディなど、最初に聴いたときに「引っかかる」ポイントの多い曲でした。「遊び 誘い 無視  あくび噛みつぶし」のような若干やり過ぎ感もある脚韻の歌詞も耳に残るフックとなっています。インストバージョンでバックトラックだけを聴くとシンセのサウンドの選び方が面白いところもポイント。
  5. 『One and Only』モーニング娘。'15:1.0ポイント
    エレキギターのリフが前面に出されているのは最近の娘。の曲ではむしろ異色な感じもあるかも。ギターのリフをメインにすることで生まれるロック感とデジタルなダンスミュージックとが巧みに融合を果たしているように感じます。特に間奏でハードさのあるギターのフレーズにデジタルならではのエディットを施しているところが印象的。なによりメインのギターのリフが「弾きたくなる」感じなのが魅力的でした。


個人的には近年のハロプロ曲のサウンドにグループを問わずに見られるひとつの傾向を感じていて、それをけっこう気に入っていたりするのですが、2位から4位までの曲を聴くとなんとなくそれは感じていただけるのかなと自分で思ったりする5曲となりました。
投票期間の比較的後期になってリリースされた『Dream Road 〜心が躍り出してる〜』のインパクトが私にとっては大きくて、単にこの1曲が加わったという以上の変化を5曲全体にもたらした感じがしています。
ほか、候補に考えつつも外した曲は、つばきファクトリーの『独り占め』、アンジュルムの最新シングル3曲、Juice=Juice『明日やろうはバカやろう』、チャオベッラチンクエッティ『一期一会』、Bitter & Sweet『DREAM GIRL』『泣いて 泣いて 恋してる』『バイバイメトロ』など。


MV部門

  1. 『愛はまるで静電気』℃-ute:3.0ポイント
    曲のタイトルであり歌詞にも出てくる「静電気」を映像のアイディアとして取り入れ、現在の℃-uteならではのメッセージを表現しているのが見事でした。欲を言えば映像の彩度とコントラストがもうちょっと高いほうが個人的には好みでした。
  2. 『One and Only』モーニング娘。'15:2.0ポイント
    歌詞のフレーズがカラフルな色のさまざまな書体で表示されるのが印象的なミュージックビデオ。娘。メンバーの赤と白を基調にした衣裳とも相まって実にポップな印象で、曲の持つ爽快さがヴィジュアルとして表現されているように感じました。
  3. 『一期一会』チャオ ベッラ チンクエッティ:1.0ポイント
    歌い踊るメンバーをメインとしたシンプルな作りではありますが、ロケ場所も含めた全体の「和」のテイスト、そして歌詞ともリンクするようにメンバー4人それぞれのソロカットで効果的なアイテムを用いることで「和の四季」を表現しているところが印象的でした。


楽曲部門で動画を貼ったものは省略しています。
今年発表されたいろいろな曲のミュージックビデオに惹かれつつも、比較的シンプルな『一期一会』と『One and Only』が深く印象に残りました。それに、脱帽するほどの「作りのうまさ」を感じた『愛はまるで静電気』を加えてのセレクトです。

推しメン部門

  • 保田圭
    理由は長くなるので割愛させていただきます。


私の投票結果は以上。もうすぐ発表となる結果と比べてみるのも楽しみです。

揺らいでいく

最近のハロプロの曲を聴いていると、エフェクトのかかり方であったり、音の定位であったり、音量 etc.がリアルタイムに変化していく曲というのがひとつの傾向としてあるように思います。聴いていると、なんかこうツマミをグイーンと回しているイメージが浮かんでくるような。
10月にリリースされたJuice=JuiceのトリプルA面シングルの1曲『Dream Road〜心が躍り出してる〜』は、まさにそんな曲の代表的な例といえると思います。



曲の進行とともにどんどんと変化していく音の質感。しかも、すべてのパートが同時に変化していくのではなく、あるパートだけは変化しなかったり、逆にあるパートだけが変化したりする。
音の質感の変化は時間を象徴しているようで、いくつもの質感が曲中に同時に存在することで、異なった時間のレイヤーが同時に存在しているような、不可思議な感覚を生み出しているように思えます。
その浮遊感は、「決意」を歌った歌詞の言葉の裏に潜む、不安や躊躇といった感情の「揺らぎ」を表現しているようにも思え、胸に迫ってくる感覚があるのです。

音の快

田中れいなさん誕生日である11月11日は、弦が4本並んだところに見えるところから「ベースの日」でもあります。
というわけで最近のハロプロ系楽曲でベースが印象的だったこの曲を。



Juice=Juiceの『明日やろうはバカやろう』は、ギターのリフがドラムとともに曲の基礎となるリズムを構築し、ベースはむしろそのリズムに躍動感とルーズさを与えるような役割。
特にイントロからAメロではかなり自由に動き回る感じで、1番Aメロではハーモニクスも入れたりと、レコーディング時には「もう思いっきりやっちゃってください」という指示でもあったのではないかと思うような過剰とも言えるヤンチャっぷりが心地よいです。


ベースをプレイしているのは、作・編曲の板垣祐介さんとのお仕事も多いらしい山田裕之さん。
イケベ楽器店のサイトで山田氏によるフェンダー製ベースの試奏動画が掲載されているのですが、この動画でもやはりハーモニクスを交えたプレイがあり、ある種お得意のプレイなのかなと思うところです。


もちろん、ベース以外にも魅力のたっぷり詰まった曲で、ドラム(生ではないようですが)のリヴァーブのかかり方も気持ちいいところ。
そして1番では「集合時間を」「捧げよう」とフレーズの終わりに「O」を重ねて「バカやろう」につなげたり、「なんでも」「何年も」と似た響きの言葉を重ね、さらに2番で「ナンでも」と同じ発音で別の意味の言葉を持ってきて遊び心を感じさせたりと、歌詞も韻を重視してよく練られていると感じます。


メロディとアレンジ、楽器の音色やサウンドの質感、そして歌詞の響きが相まって「快」を生み出している1曲です。

CHALLENGEЯ!

忘れないうちに、というわけで9月17日新宿ReNYで開催されたLoVendoЯライブの話を。


ギタリスト・魚住有希さん卒業ライブとなったこの日の公演、ライブタイトルに『CHALLENGEЯ!』と、新たな道へ挑んでいく魚住さんへのメッセージが冠されていたとはいえ、ライブ序盤では特に卒業に触れるようなコメントや演出もなく、もし予備知識のない方がご覧になったらメンバーの卒業ライブだとはわからなかったかもしれません。
しかし、一見いつもと変わらないように見えても、前ツアーとガラリと変わったセットリストには魚住さんの手による曲や最近は演奏の機会が少なかった初期楽曲もつめ込まれた特別なもので、その「いつも通りで特別」なところがLoVendoЯらしさなのかなと思いました。


このライブは、魚住さん在籍時のLoVendoЯを振り返るようなニュアンスもあったかもしれません。魚住さん作曲の『むせび泣く』で、アウトロの演奏が続く中、ボーカルのふたりがステージを去っていくという過去のツアーでやっていた演出の再演は嬉しいところでしたし、そこからサポートを含めた楽器隊だけでのインスト曲への、なにかが弾けるかのような流れは鳥肌が立つほどでした。


そして、魚住さん卒業をはっきりと感じさせるアンコール。宮澤茉凛さんの弾くアコースティックギター田中れいなさん岡田万里奈さんの歌だけで、魚住さんに贈るように『宝物』が歌い出されたのは、寂しさがありつつも爽やかさを感じるような光景でしたし、その『宝物』終盤で田中さん岡田さんが客席に「ラララ」のリフレインを歌うように促し、客席の合唱に応えるように魚住さんがギターソロを弾いたのは、ファンと魚住さんのLoVendoЯでの最後のセッションという感覚を覚えました。
この『宝物』って、もちろん魚住さんの卒業決定の前に作られた曲ですし、決して卒業に際しての歌でもないんですけど、魚住さんが作曲、田中さんが作詞ということも含めて、この場で歌われるのにこれ以上ないほどふさわしい曲になっていたわけで、やはりどこか「運命」という言葉を意識させられました。


それから、最初のアンコール後には魚住さんは客席に向け肉声であいさつをしてステージを降りたのですが、ダブルアンコール後には、魚住さんがマイクを通して想いを語れるよう、田中さんがステージを去り際に自分のマイクを魚住さんに。LoVendoЯのリーダーらしさを見せる田中さんの姿は、頼もしくもありました。


魚住さんの最後のあいさつ「またどこかで会いましょう」は前向きなものでしたし、これから3人で活動していくLoVendoЯの告知をした田中さんが「LoVendoЯ新しい色になったなと思ってもらいたい」という意味のことを口にしていたのもやはり前向きで、LoVendoЯの、魚住さんの「これから」を感じさせるライブになっていたと思います。


個人的に今回のライブで一番印象に残った瞬間は、本編終盤にボーカルふたりとギターふたりのメンバー4人全員がステージ前方に出てきて横一列に並んだ瞬間でした。そのとき歌っていた曲は『Stonez!!』。
「僕たちはただ 転がりゆく意思のまま もう限界に甘えちゃいらんない」
ちょうどその瞬間歌っていたこの歌詞のように、そこに留まらず「転がりゆく」4人の決意。きっと4人誰もが転がり挑み続ける「CHALLENGEЯ!」なのだと思います。


※引用部はLoVendoЯ『Stonez!!』(作詞:唐沢美帆/作曲:阿久津健太郎)より