鉄よりつよいもの。(旧)

KKTのブログ『鉄よりつよいもの。』のはてなダイアリー時代(2004年から2017年まで)のアーカイヴです。新規更新はしません。現在は新しいブログ http://kkt.hatenablog.jp/ をたまに更新

ぼくの国にはこんなことわざがあります。

3月26日に、小川麻琴さん芸能活動休止前最後の舞台出演となる、下北マダムスvol.1『Intro』夜公演を、新宿vatiosで観劇してきました。
この公演は、小川さんとは『The Radio Show Must Go On〜バレルナキケン〜』や『軋み』で共演している俳優の福澤重文さんが、宮下貴浩さん、ホンダヒデカズさん、えのもとぐりむさんとともに結成した演劇ユニット「下北マダムス」の旗揚げ公演。前半が「ふたりのつみき」、後半が「おとなの秘密」という、マンションの同じ部屋を舞台にしたふたつの劇が連続して演じられる構成で小川さんは後半の「おとなの秘密」に出演でした。
この公演、普通のお芝居とは違った趣向の公演となっていまして、当日の説明によると1時間50分の公演時間のうち「1時間はアドリブ」というもの。ストーリーは決まっているものの、それを舞台上で即興で膨らませていくというものでした。
小川さん出演の「おとなの秘密」は、マンションに引っ越してきた夫婦と隣の部屋の夫婦、引越し屋のふたりの男という6人の男女が一部屋の中で繰り広げていくコメディなのですが、いや、笑いました。次々と舞台上でギャグが繰り出され、アドリブゆえのリアクションがまた笑いにつながっていくというのは普通の劇では見られない面白さ。特に、劇の後半で本川迅さんという俳優さんが演じる登場人物のあるセリフには、久々にお腹が痛くなるほど笑うという経験をしました。観劇から数日経ったいまでも思い出すと笑いがこみ上げてくるほどです(笑)。
そして笑いだけではなく、アドリブのギャグによって広がっていくストーリーを予定された結末に向かってしっかりと着陸させていくという俳優さんの力量を感じることのできる舞台でした。
小川さんは、福澤重文さんとともに劇の中心人物となる佐藤夫妻を演じていました。小川さん自身はむしろアドリブは少なめで、お芝居の軸を担っていくような役割だったと思います。
観客にはどこまでが台本でどこがアドリブかはわからないのですが、やはり俳優さん同士もほかの出演者がなにをやるかわからないという特殊な設定が生む独特の空気のようなものは感じました。実験的な要素も大きいであろうこの舞台に小川さんが参加していたことは嬉しいことでしたし、小川さんがひとまずの最後の舞台となるのがこの作品でよかったと感じています。


最後に、もうひとつだけ。前述したように今回の舞台は二部構成で、前半の「ふたりのつみき」は、後半の「おとなの秘密」とは趣の異なる、シリアスでちょっと重い内容の二人芝居です。
ですが、「ふたりのつみき」も「おとなの秘密」も、夫婦間のある出来事が物語上の大きな鍵となっています。ふた組の夫婦は、同じような経験をしながら、ひとつの「違い」によって、そのあとにたどる道は大きく違っていっている。もしかしたら、「ふたりのつみき」の男女が「おとなの秘密」の佐藤夫妻であったかもしれないし、逆に佐藤夫妻が「ふたりのつみき」の男女だったかもしれない。
そんな関係を描いているようにも思えて、ただの楽しく面白いだけの舞台ではなかったのかなと思っています。