鉄よりつよいもの。(旧)

KKTのブログ『鉄よりつよいもの。』のはてなダイアリー時代(2004年から2017年まで)のアーカイヴです。新規更新はしません。現在は新しいブログ http://kkt.hatenablog.jp/ をたまに更新

「ともに地球へ!」

2013年の初更新は昨年書き残してしまっていた話題で。


2012年12月16日に、小川麻琴さん出演の舞台『人狼 ザ・ライブプレイングシアター』(人狼TLPT)夜公演を観てきました。
この舞台、通常のお芝居とは違う実験的なもの。詳しくは公式サイトのルールをご覧いただきたいのですが、パーティゲームの「人狼」が元となっていて、そのルールに沿って演じられる舞台でした。今回の公演では、時代設定は未来、舞台設定は地球に帰還する宇宙船の中、“人狼”は人間の精神と肉体を支配する寄生生物、というSF的な味つけがされていたものの、ルールはゲームの人狼とまったく同じ。あらかじめ決まっているのは基本設定だけで、出演者は開演10分前に自分の役割=普通の人間か、特殊な力を持つ“能力者”か、人狼か、を知らされ、すべてアドリブで進行していくという舞台でした。
こういう特殊な舞台で、ネット配信番組などでの発言によると小川さん自身が出演を知ったのは本番まで2週間足らずの12月4日だそう。リハーサルには小川さん自身の希望で当初の予定以上に参加していたらしいのですが、ほかの出演者の方々が複数回のステージ出演を重ねている中、最終日1日だけのゲスト出演というのは、舞台のルールにも、カンパニーにも慣れてない部分があったのかなという印象は正直受けました。舞台の序盤ではほとんど発言できなかったり、発言しようとしてもほかのキャストが喋り出すと引いてしまうところがあって、序盤は舞台上にいるだけになっちゃった感じはあったかなあと。この舞台、劇中での1日にあたる一幕ごとにふたりもしきはひとりの出演者が退場していくので、この状況のまま小川さん退場になっちゃったらどうしよう的なことを考えたりもしたのですが、幸いなことにわりと終盤まで残りまして、ステージ上のキャストが少なくなってくるとどんどん発言も増えていきましたし、あと結果的に小川さんの判断が舞台の終盤を盛りあげる要因になっていたりで、そこはよかったなと思っています。
一方でさすが小川麻琴と思わせられる部分もありまして、本編終演後のカーテンコールで、予定では最後にゲストの小川さんが喋って締めとなる予定らしかったところ「大千秋楽だからみなさんで」という振りで全キャストが一言ずつあいさつすることになって、ここは舞台経験を多く積んできた小川さんらしい気配りだったなと。
最後のあいさつでは小川さん「ほんとにアドリブが苦手なんですけど、少し度胸がついたかなと思います」というようなことを話していました。その後の番組なんかでもまたやりたいという意欲も見せているし、小川さん自身にとってもよい経験になった舞台なのかなと思っています。


さて、小川さん以外の部分で舞台の感想を書きますと、ゲームのルールで舞台を進行するだけに留まらない趣向があって、幕間にあたる「夜」の時間に、観客には「直前に退場した=処刑された&人狼の犠牲となった登場人物の役割(=人間か、能力者か、人狼か)」という舞台上のキャストが知らない情報が明かされます。それにより、その後の舞台を観ているとキャストの方々の駆け引きみたいなものも見えてきて面白かったです。
キャストの中で個人的に印象に残った方を挙げると、神父クリス役の林修司さんと、機関長マドック役の松崎史也さん。このおふたりはどんどん発言していって舞台上の空気を作り上げていく、しかも演じている役のキャラクターが一切崩れないというところがすごかったです。 おふたりの存在が舞台を進行させていく推進力みたいなものを生み出していように感じました。
そしてもうお一方、経理エスター役の横山可奈子さん。実はエスターは最後まで残った登場人物のひとりなのですが、最後に残ったのは“人間”(これがエスター)と、人間だけど人狼の味方をする“狂人”、そして“人狼”がひとりずつの3名という組み合わせ。狂人と人狼が結託すれば人間が全員いなくなって人狼勝利エンドとなる状況で、観客はこの時点で3名の役割の内訳を知っているので、最後の幕が上がった瞬間に人狼勝利で終わるのかという空気が場内を支配してたように思います。ところが、ここでステージ上で状況を的確に判断したエスターがいち早く「私、人狼♡」と名乗るという超ファインプレー。これによって大逆転の人間勝利エンドとなったのでした。
ここが、舞台ならではの部分かなと思うんですね。落ちついて考えてみると(私がルールを誤解しているかもしれないんですが)、エスターが「私、人狼♡」と名乗ったあとで本物の人狼が「いや、俺が本物の人狼だ!」と名乗ればまたひっくり返せた状況のはずなんですよね。でも、もうエスターが名乗った時点で客席も含めて劇場内の空気が完全にエスターの勝ちって流れになっちゃった。ここがゲームの『人狼』とも違った、舞台と客席で作っていくという、今回の公演の特徴が見事に出た部分だと思います。


今回、小川さんの出演がなければ観にいかなかったであろう舞台なのですが、観てよかったです。たぶん2時間を越えていた公演時間の大半でほんとに手に汗を握って観ていました。
すでに、1月29日からの次回の公演も決定しています。(公式サイト
今回の公演も1回は観にいきたいなと思っております。
それから、小川さんもまた挑戦したいみたいな発言がありましたし、もし今後もまた出演があればそのときはぜひ観たいですね。
スタッフの方は女性キャスト限定の公演というアイディアもお持ちのようで、それも期待です。