偉大な存在

ネットニュースで加藤和彦さんの訃報を目にしたときは自分の目を疑いました。ごく最近まで精力的に活動していらっしゃったというのに……。
“加藤和彦”というお名前を意識する以前に、子供のときから「なんか面白い曲」として知っていた『帰って来たヨッパライ』や、音楽の教科書に載っていた『あの素晴しい愛をもう一度』などで、その曲はずっと耳に馴染んでいました。のちにサディスティック・ミカ・バンドの存在を知り、それらの曲を作った人とミカ・バンドの中心人物が同一人物だと知ったときには、その音楽の多彩さに驚いたものでした。
近年も、和幸（かずこう）やVITAMIN-Qとスタイルの異なるユニットやバンドで活躍していらっしゃいましたが、それぞれのアルバムリリース時に雑誌などに掲載されたインタビューを読んで印象的だったのは、楽器や機材に関するこだわりと知識でした。“この音は、この楽器でこの機材でこういう録り方をすることによって生まれるのだ”という膨大な知識と経験を、生きたノウハウとして現在の音楽シーンに伝えてくれる偉大な存在だったのだと思います。
もっともっと、その知識や経験を残していってほしかったと思うのです。