鉄よりつよいもの。(旧)

KKTのブログ『鉄よりつよいもの。』のはてなダイアリー時代(2004年から2017年まで)のアーカイヴです。新規更新はしません。現在は新しいブログ http://kkt.hatenablog.jp/ をたまに更新

磁石のバランス

カントリー・ガールズ3枚目のシングルの1曲『恋はマグネット』は、オールディーズ的なイメージの楽曲が続いていたカントリー・ガールズには異色な1曲といえるかもしれません。



打ち込みをベースにしたサウンドは、キラキラしたシンセの音色や全体のリバーヴ感、ちょっとジャジィなギターのフレーズなど、1980年代っぽさがあり、オールディーズ風のほかの曲とはまた別の「懐かしさ」も感じます。
もちろん、ただ懐かしいサウンドを再現しているのではなく、間奏の部分では今風のダンスミュージック的なアプローチがされており、シンセベースは音色や役割も変化しています。この間奏はミュージックビデオでは稲場愛香さんのダンスがフィーチャされており、ヴィジュアルとサウンド両面でアクセントとなっている部分だと思います。


そのサウンドに乗る歌詞も素敵です。
サビで重ねられる「ユラリ」「フワリ」「キラリ」という似た響きの言葉は耳に残ります。
そして「君の腕 揺れて溶けたい」「くちびるに そっと触れたい」と、自身の「してみたい」行動を歌う部分は「ユラリ」「フワリ」と浮遊感がありどこか不安定さを帯びた言葉が使われているのに対して「この本音 早く触れて」と「してほしい」願望を歌う部分では「キラリ」と、ニュアンスの異なる言葉が使われているのが、言葉の背後にある感情を広げていくようです。

2番の歌詞

急な坂道 後ろ歩きでふざけあい
ミニチュアの街 見下ろしたっけ

は「急な坂道」と「ミニチュアの街」というフレーズで「街の中心部から離れた高台」というロケーションを具体的な情景描写なしでイメージさせるのが見事です。
また「ミニチュア」(=作り物)という言葉が使われることで、街に象徴される自分を取り巻く世界に違和感を感じる思春期の心理も漂わせているように思えます。


なによりそれを歌うカントリー・ガールズの歌声が魅力的です。
この曲のメインといえる年長メンバー3人の声の表情はもちろん、Aメロを歌う年少メンバー4人の声に残る幼さも、大人と子どもの間で揺れている曲の世界をより引き立てているようです。
私にとっては嗣永桃子さんのヴィブラートのうまさを改めて感じさせられた1曲でもあります。


サウンド面での現代的なアプローチと懐かしさのバランス、歌詞で歌われる揺らめく心理のバランス、年長メンバーと年少メンバーの歌声のバランス、いくつものバランスが絶妙さを見せている1曲だと思います。


※引用部はすべて カントリー・ガールズ『恋はマグネット』作詞:井筒日美/作曲:Yasushi Watanabe 発売:アップフロントワークス より