鉄よりつよいもの。(旧)

KKTのブログ『鉄よりつよいもの。』のはてなダイアリー時代(2004年から2017年まで)のアーカイヴです。新規更新はしません。現在は新しいブログ http://kkt.hatenablog.jp/ をたまに更新

「君」と「私」の距離

℃-uteの『君は自転車 私は電車で帰宅』の歌詞は、全編にわたり、主に時系列に沿った「私」の視点からの状況の描写や説明で成り立っています。「瞬間」が積み重ねられていると表現することもできるでしょう。*1
「君もおんなじふうに思ってよ」
「君はどんな気持ちでいるの」
むしろ客観的な描写が大半を占める中で、数少ない「私」の心境を語るフレーズは、いずれも「君」との間に存在する「距離」を感じさせます。
シンプルな歌詞ゆえに、さまざまに解釈することができる曲だと思います。
まだ初々しいカップルの、日常のあるひとコマと見ることもできるでしょう。
同時にそこに、ふたりの間にある「距離」に気づいてしまった「私」の、切ない瞬間を見ることもできるかもしれません。


で 一つ目の信号青色で通過
それでもずいぶん離れてしまったみたい

「信号」は「私」と「君」を遮る障害のメタファーと見ることができるでしょう。その信号は青色=ふたりの間を遮るものはない。だけど、ふたりは離れていってしまう。
タイトルであり、サビで繰り返し歌われる「君は自転車 私は電車で帰宅」というフレーズも、一緒の時間を共有することのできないふたりの関係を暗示しているように思えます。

遠くから手を振る君に
幸せをもらった私

ただ、ふたりの関係の行く先が悲しい結末だったとしても、そこにも幸せはあるはずです。それは、ごくささやかなものかもしれないけれど。

*1:娘。の『愛しく苦しいこの夜に』と近い手法と見ることができるかもしれません。