The Door into Summer
中野サンプラザの扉を開けると、強く冷たい風が吹きつけてきて、いまが冬であることを改めて教えてくれる。
駅に向かって歩きながら、ほんの十数分前に聴いた歌のことを考えていた。
「贅沢な夏にしたい」
そう歌っていた彼女たち全員が揃って迎える夏がたぶん来ないことは、会場にいた誰もが知っていたはずだ。明るいはずの歌が、奇妙な切なさを持って聴こえたものだった。
1匹の牡猫の話を思い出す。
ぼくの飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。家にたくさんあるドアのどれかが夏に通じていると信じているのだ。
「贅沢な夏」がやって来なくてもいいような気もする。これまで観てきたもの、魅せてくれたもので充分だ。そこに不満はない。
だけど、どこかに期待を抱えていたほうが、きっと楽しくなるんじゃないかと思う。
だから、敬愛すべきダン・デイヴィスに倣ってこう言おう。
そしてもちろん、ぼくはピートの肩を持つ。