鉄よりつよいもの。(旧)

KKTのブログ『鉄よりつよいもの。』のはてなダイアリー時代(2004年から2017年まで)のアーカイヴです。新規更新はしません。現在は新しいブログ http://kkt.hatenablog.jp/ をたまに更新

5月6日、確かめた距離。

5月6日、私はさいたまスーパーアリーナにいた。
そして考えていた。私はなぜ、このコンサートを観に来たのか?
もちろん、「現在の娘。」を観ておきたいという単純な理由がある。
それに加えて、吉澤リーダー卒業となる公演をしっかりと観ておきたいという理由もあった。
しかし、私がこの日のコンサートを観に来た本当の理由に気づいたのは、アンコールも終わり、公演終了を伝えるアナウンスが流れたときだった。
結局私は、昨年の夏に去っていった彼女が、花束を抱えてステージに上がってくることを期待していたのだ。それが、私がさいたまスーパーアリーナに来た最大の理由だった。
それに気がつくと、自分の未練がましさが可笑しくて堪らなかった。帰り支度をしながら「いいコンサートだったね」と同行者と笑顔を交わしたけれど、その中には未練がましい自分への嘲笑も何割か混ざっていた。


今回の公演を、私はアリーナクラスでは今までにないほどステージに近い席で観ることができた。にも関わらず、なにかステージに没頭できない、ステージと自分の間にある見えない壁のようなものを感じていた。その壁を作ったのはほかでもない、私自身だ。
「5月6日さいたまスーパーアリーナ! 私たちはいま“ここにいるぜぇ!”」ステージでは娘。たちが声を揃える。そして、それにあわせて客席からも大きな声が上がっていた。そのときも私は、声を上げなかった。上げることができなかった。壁に遮られ、その場にいない人間に「ここにいるぜぇ」と叫ぶ資格など、ない。


モーニング娘。は、歩いている。これまでもずっと。そしてこれからもきっと。絶えず同じところに留まらず、変わりながら。だから私も遅れないように歩いていこう。いつの日かそんな風に思ったものだった。でも、私はもう半年以上前に脚を止めてしまっていたらしい。私の足あとは、8月の新宿で終わっている。
自分でも薄々は感じていた。立ち止まった私と、歩き続ける娘。たちの距離がどんどん広がっていることを。そしてその広がった距離をはっきりと確認したのが、この日のコンサートだった。
もしかしたら、急いで走ってゆけば、今からでもまだ追いつける距離なのかもしれない。でも、今さら駆け出すつもりもない。
ただ、追いつくつもりはないけれど、これからも、離れた場所から娘。たちを眺めていたい。そんな風には思っている。