鉄よりつよいもの。(旧)

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『リボンの騎士』で遊んでみる

ミュージカル『リボンの騎士』について、今日はちょっと想像を巡らして遊んでみようと思います。
劇の内容に触れるので、「続きを読む」の上改行しておきます。









今回のミュージカルでは主役のサファイアの衣裳は白を基調としたもの。“リボンの騎士”を名乗るときは、逆に黒尽くめとなります。また、もうひとりの主役というべきフランツ王子の衣裳も、白と黒のモノトーンを基調としています。
これは、漫画的な華美なデザインを避けるという狙いがあったのだと思いますが、衣裳の色が登場人物の内面を示していると解釈してみると面白いかもしれません。
まず、サファイアは男と女ふたつの魂を持っています。自分は女なのか男なのかという迷いを持つサファイアは、確固たる自己を持つことができません。サファイアアイデンティティの欠損を抱えているのです。
そして、フランツ王子はサファイアに出会うまで人に恋することを知りません。心に満たされない部分を持っており、内面に欠損のある人物といえます。
王妃、すなわちサファイアの母親も、白を基調とした衣裳を着ています。彼女はサファイアが女の子であることを隠さねばならず、娘を幸せに育てるという母の役割を果たせなかったという自責の念を抱いています。これもある種の内面の欠損といえるでしょう。
さらにもうひとり、黒の衣裳を着た魔女ヘケートは、愛されることのみを望み、愛することを知らなかったことが明確に劇中で語られています。愛情の欠損がヘケートにはあります。
ここから、白、あるいは黒の衣裳は、その人物の内面になんらかの欠損があることを示していると解釈することができるのではないでしょうか?
サファイアは、亜麻色の髪の乙女となったときには赤の衣裳を身にまといます。亜麻色の髪の乙女サファイアが自らの女性性だけを出した姿。女性となりきることで自己の存在への迷いはなくなり、アイデンティティの欠損は解消されています。だからこのときの衣裳は赤なのだと解釈できます。
物語の終盤において、サファイアは完全な女性となることで、フランツはサファイアを愛することでそれぞれの欠損を回復しています。もし、このあとでふたりの婚礼が描かれていたとしたら、そのときにふたりは、そして同様に欠損を解消したサファイアの母や、魂を得たヘケートは、どんな色の衣裳に身を包んでいたのか――そんな想像をしてみるのも、ひとつの楽しみ方ではないかと思っています。