無色透明のギター
今を去ること十ウン年前になりますが、1980年代末、ザ・レッズというバンドがありました。最初は3ピース編成だったのですが、デビュー後に新メンバーが加わり、ボーカル&ギター、ギター、ベース、ドラムという4人編成となりました。この編成自体はバンドとしてはオーソドックスなものですが、ザ・レッズが特異だったのはボーカリストが歌いながらエレキを弾き、もうひとりのギタリストがアコースティックギターを担当しているということでした。アコースティックギターがカッティングやアルペジオ、リフなどで常にバンドのサウンドを支え、そこにポリスやU2を彷彿とさせる空間系のエフェクターを使ったエレキギターのサウンドが絡み、独自のサウンドを形作っていたのです。
ザ・レッズはその後マーキームーンと改名して活動しますが、メジャーとはならないまま活動を停止しました。そのバンドでアコースティックギターを弾いていたのが嘉多山信氏。バンド解散後はセッションプレイヤーとして活躍、娘。のニューアルバム収録の『無色透明なままで』で流麗なギターを聴かせてくれているのが氏です。
当時、幅広いプレイでアコースティックギターの可能性の広さを教えてくれた氏が娘。の曲に参加しているのは驚きでしたし、また同時に私にとっては非常に嬉しい出来事でもあったのです。