鉄よりつよいもの。(旧)

KKTのブログ『鉄よりつよいもの。』のはてなダイアリー時代(2004年から2017年まで)のアーカイヴです。新規更新はしません。現在は新しいブログ http://kkt.hatenablog.jp/ をたまに更新

『☆☆☆』アルバム曲レビューなんかを唐突にやってみる

タイトルのとおりにアルバム曲について書いてみたりするのです。そんだけこのアルバムにハマっているんです、今。

星のしずく

アルバムオリジナル曲としては1曲目となる『星のしずく』は、アップテンポの前2曲とはガラッと趣を変えたミディアム・ナンバー。1曲前の『恋☆カナ』とは対照的にも思えますが、歌詞に使われる「流れ星」という言葉、そして「今は叶わなくてもいつか届く想いを信じる」という歌詞の内容は『恋☆カナ』と共通するものがあります。『恋☆カナ』の明るさの中に見え隠れしていた、恋する少女が抱える切なさと儚さ。それを前面に出したこの曲は、もうひとつの『恋☆カナ』です。

Spaghetti

個人的にこのアルバム最大の問題作だと思うのがこの『Spaghetti』。アフリカン・ビートに乗って歌われるもうちょっと先へ進みたい少女の欲求。「かけ引きぐらい」しようとしているところ、「カの字さえ」見当たらなかったころからは進展しているみたいですね。「パスタみたいに まかれた〜い!」とか「好きなときだけ食べないで」というフレーズは考えようによっちゃ際どいわけですが、いやらしく聴こえないのはまだ色気を感じさせない久住さんの声質ゆえ。「ダーリン」というフレーズが使われ次に収録されている稀代の能天気ソング『Loveだよ☆ダーリン』への橋渡しとなっているのも構成の妙。

I miss you

マイナーで幕を開け、一旦メジャーとなって再びマイナーに戻る進行がより曲の切なさを募らせています。ドラマティックに盛り上がっていくアレンジも見事。久住さんの歌唱はどっちかっていうと情感を込めるわけでもなく素直に歌っているんですけど、それだけに幼い失恋の痛みを感じさせます。おそらくこのアルバムが1年後に作られていたら別の仕上がりになっていたであろう曲。技術とか計算では決して作ることのできない刹那さがここにはあります。

EVERYDAY PRECIOUS DAY

この曲は歌詞が耳に残ります。「しゃべり方少しずつ 君と同じになって」「歩き方いつの間にか 君があわせてくれた」。ワンコーラス目とツーコーラス目、同じメロディで歌われるこのフレーズは、どちらか片方が作り上げるのではなく、ともに「二人の未来」を作り上げていく「君」と「私」(歌詞の中では一人称は使われていないのだけれど)の関係を感じさせます。歌詞とメロディ、アレンジ、そして歌声が一体となり眩しい情景を作り上げた素晴しい1曲です。


このアルバムがバラエティに富んだ曲を収めつつもアルバムとしての統一感が感じられる理由として“月島きらり”という架空のキャラクターのアルバムだという点は大きいと思います。明るくて前向きで食べるのが好きで…という明確な設定があるから、そのイメージに基づいて作られた曲はそれぞれ異なったテイストを持ちつつも、ひとつの世界の中に納まっている。ある意味でこのアルバムは強力なコンセプトアルバムとも言えるでしょう。
しかし、キャラクターだけがそこにあっても、それはいかにも作り物めいた作品になってしまいます。そこに不可欠だったのは“久住小春”という現実の存在。久住さんの歌声がこのアルバムに少女のリアリティを与え、優れたアイドルポップスたらしめているのだと思います。
『☆☆☆』というタイトルは、もちろん「三ツ星レストラン」とかの「三ツ星」が由来なんでしょうけど、『恋☆カナ』で「私」と「君」とで「二つ星」と歌われていたことを考えると、“久住小春”と“月島きらり”、そしてアルバムを聴く“君”――その3人で「みつぼし」という意味もあるのでは、と思っています。