鉄よりつよいもの。(旧)

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『ハイカラ探偵王 青いルビー殺人事件』

6月30日に娘。田中さんとBerryz清水さん、須藤さん出演の舞台劇『ハイカラ探偵王 青いルビー殺人事件』を観劇してきました。
屋敷の中だけに舞台が限定された一夜の密室劇は、舞台劇にふさわしい内容であったと思います。プロデューサー、脚本、演出が同じとあってか、ドラマ『ケータイ刑事』に似た雰囲気のある舞台となっていました。
舞台初出演となる田中さんはコミカルな部分とシリアスな部分のメリハリがしっかりしていて、また田中さんの持つ悪戯っぽさが主人公のキャラクターにも反映されていて、作品全体を重くなりすぎない効果をもたらしていたように思います。
作品全体はライトな推理劇と呼べるものでしたが、劇を観終わったあとで個人的に考えたことを書いておきます。ズバリなネタバレではありませんが「続きを読む」で。





劇終盤の謎解きの場面では、ドラマ『ケータイ刑事』でよく使われているのと同じ手法で、劇中の過去の場面が再現されます。その再現シーンで探偵れいなが着ているのは、過去の時点でれいなが着ていた服ではなく、劇中の“現在”でれいなが着ている衣裳です。
これは、もちろん舞台劇であるため衣裳を瞬時に変えることができないという理由が大きいでしょう。しかし“現在”の服のままで“過去”が演じられることで、その再現シーンは客観的な視点での“過去”ではなく、あくまで探偵れいなの解釈した“過去”なのだという見方もできるのではないでしょうか?
つまり、謎がすべて解明され事件が解決したように幕を閉じる『ハイカラ探偵王』は、実は“真実”はなにも語られていない――と解釈することもできるかもしれません。


もうひとつ、登場人物を社会との関係で見てみましょう。
主な登場人物の中で、子爵夫妻は、登場人物の中でも目立って年長で、明確に大人社会に属しています。逆に夫妻の次女はまだ幼く、明らかに子供。やがて大人社会に属することが予定された、子供という役割を持った人物です。
ベリ清水さんが演じた姫神刑事は、容姿は幼さがあるものの、東京警視庁という組織に属しており“大人社会”の構成員といえます。
一方で、ベリの須藤さんが演じた子爵夫妻の長女は、成人近い年齢ながら、病弱なためにほとんど家から出たことがないという設定。大人社会に属することができるか不確かな彼女は、いわば宙ぶらりんのように社会から隔絶した存在です。
社会の中で属する立場が明確な者、明確な立場を持たない者。さて、“探偵”というのは?
属する場所を持たない者たちの物語。『ハイカラ探偵王』を、そう見ることもできるのではないかと思います。