鉄よりつよいもの。(旧)

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『ファッショナブル』

娘。さんたちは無事にフランスでのJapan Expoでの公演も終え、現在はハロコンに向けてリハーサルに励んでいるという時期ですが、いまごろになって舞台『ファッショナブル』の感想を書いてみたりするのです。


私は6月17日の夜公演を鑑賞しました。
観劇して一番に感じたのは、登場人物ひとりひとりの人物造形の魅力でした。それは『ファッショナブル』という物語の登場人物としてだけ見ても充分に魅力的なのですけど、演じる娘。さんたちのキャラクターを知っていると、より魅力を感じるように造形されていたと思います。
リーダーとしての責任を感じているがゆえに、つい意地を張ってしまったり、周りと摩擦も生んでしまう主人公・長谷川ココ。彼女のひたむきさには、多くの人が演じる高橋さん自身をオーバーラップさせて観るはずだと思います。
道重さんが演じるアイドル・森成あんなは、最近の道重さんがバラエティ番組などで見せるパブリックイメージをカリカチュアライズしているかのようで、道重さん自身がセルフ・パロディを演じているような面白さがありました。
一方で、ココのよき理解者である折口由加里は、他人をよく見ていて細やかな気遣いのできる“いい子”で、こういうボケボケなエピソードを生み出しちゃう亀井さんとはかなり違ったキャラですよね(笑)。でも、それを亀井さんがごくナチュラルに演じているっていうのが素敵すぎです。
そして、新垣さんが演じる村田美優。たぶん、美優っていまの娘。の中にはいないタイプのキャラクターだと思うんですよね。歴代の娘。の中で挙げるとするなら、一時期の“安倍なつみに対する後藤真希”的なイメージのキャラクターだと思うのです。その、本人のイメージとは別のキャラクターを新垣さんがしっかりとこなしているのが素晴らしかった。
演じる本人と重なっていたり、あるいはイメージのギャップを魅せてくれたり、それぞれに異なった本人と役との寄り添い方が魅力的な舞台でした。


ただ、役によってはその魅力が充分に描ききれていないなあと感じたのも事実です。
たとえば、田中さん演じる草壁ルイとジュンジュンの演じるニナ・リッキーのバイヤーコンビなんて、買い付け先でいったいどんなやり取りを繰り広げているのか想像するとすごい面白そうですよね。でも、それが実際の舞台の中では描かれていないわけで、もったいないなという印象が残りました。それは光井さんのバイト店員・越野ミカも、リンリンの李芳芳も同じ。公演前のニコニコ生中継での特番では越野ミカのバックグラウンドの設定が語られていましたし、どの役も広げれば広げられるだけのキャラクターとして描かれていたはずだと思っています。


だから、舞台をみたあとで思ったのは、これは全10話くらいの連続ドラマにできちゃうんじゃないかって。
ココと父親の関係と、セレクトショップ TRESORの再生をシリーズを貫く軸として、毎回、TRESORを訪れるさまざまな人たちの抱える問題を、ファッションのコーディネイトで解決していく ――そんな『王様のレストラン』みたいなドラマを想像しました。
その最初と最後の3、4話分をギュッとまとめたのが、舞台『ファッショナブル』のストーリー。全10話のドラマだと、3話から8話くらいでTRESORのスタッフひとりひとりをフィーチャーした物語が1話ごとに繰り広げられます。

とまあ、舞台『ファッショナブル』には、そんな妄想をしてしまうほどの材料が詰め込まれていたわけで、その意味ではすごく贅沢な舞台だったのかもしれません。


『ファッショナブル』については、後日また触れると思います。