鉄よりつよいもの。(旧)

KKTのブログ『鉄よりつよいもの。』のはてなダイアリー時代(2004年から2017年まで)のアーカイヴです。新規更新はしません。現在は新しいブログ http://kkt.hatenablog.jp/ をたまに更新

2009年の歌謡曲

Dohhh UP!で娘。の8月リリースの新曲『なんちゃって恋愛』の配信がスタートしました。2009年に入ってから、娘。は『泣いちゃうかも』『しょうがない 夢追い人』の2枚をシングルとしてリリースしていますが、今回の『なんちゃって恋愛』も含め、3枚のシングルには一貫した方向性を感じることができます。
昨年、娘。がリリースしたオリジナル曲である『リゾナント ブルー』は、メロディとリズムが強く結びついた曲でした。おそらく、あのリズムでなければ、『リゾナント ブルー』という曲は成立しえないはずです。
それに対し、2009年に入ってからの3曲は、いずれも16ビートの楽曲ではありますが、メロディがリズムから独立して成り立った曲になっています。たとえば、8ビートで生楽器を中心としたアレンジでの『泣いちゃうかも』『しょうがない 夢追い人』というのが容易に想像できます。今回の『なんちゃって恋愛』も、ラップパートというひとひねりした趣向があるものの、同様に別のアレンジでも普通に成立するメロディになっています*1。3曲はいずれも普遍性のあるメロディを意識して作られたのではないかと思います。
そして歌詞もまた、古典的ともいえる男女関係であったり、女性の抱える空虚さだったり、普遍性を意識しているのではないかと思えます。3曲とも「携帯」や「メール」など、登場していても不思議ではない時代性を感じさせる言葉が使われていないのは意識的なものではないでしょうか?
そんなふうに、メロディと歌詞はそれこそ20年前とかもっと前の時代の曲と並べても違和感がないようなものになっている一方で、アレンジはすごく尖っています。『しょうがない 夢追い人』を初めて聴いたときに、シンセベースの音が尋常じゃなく歪んでいるのに驚きました。ふつうのポップミュージックではありえないほどの過激なことをやっちゃっているわけで、アナクロさすら感じさせるメロディと歌詞を現代のとんがったアレンジをのせてしまうっていうのが、この3曲の共通したコンセプトとしてあったのではないかと思います。
そこで目指しているのは、2009年に“歌謡曲”をパロディでも懐古でもなく成立させてみるという試みであったように思えるのです。



で、個人的な予想なのですが、次の曲ではまた娘。の曲はガラリと方向性を変えてくるのではないかと思います。理由としては、まあ“三部作”っていうのはよくあるわけでして。今回の『なんちゃって恋愛』では2番の道重さんソロパートの歌詞で「この歌詞は私のことを歌っている」というフレーズがありますよね*2。前作『泣いちゃうかも』やそのカップリング『弱虫』、『しょうがない 夢追い人』は女性の共感を狙った歌詞でもあったと思うので、歌詞で娘。の曲自身についての言及ととらえられるようなフレーズが出てくるのは、三部作の締めくくりっぽくあるのではないかと思っています。

*1:曲の構成としてはラップパートを除いてもAメロ、Bメロ、サビという構成で曲として成立しています

*2:聞き書きなので不正確かもしれませんが大きく違ってはいないはずです