鉄よりつよいもの。(旧)

KKTのブログ『鉄よりつよいもの。』のはてなダイアリー時代(2004年から2017年まで)のアーカイヴです。新規更新はしません。現在は新しいブログ http://kkt.hatenablog.jp/ をたまに更新

「不幸の中の幸せ」

共依存(co-dependency)」という言葉があります。もともとは、アルコール依存症の患者とその家族の間に見られる関係に付けられた言葉です。
患者の家族が献身的に患者の世話をすればするほど、患者は自らの抱える問題を直視できず、結果として依存症から回復できなくなってしまいます。この場合、患者はアルコール依存であると同時に、献身的な家族にも依存しています。そしてまた、家族も患者の世話をすることに自分の存在価値を見出し、そこに依存してしまっているのです。
この共依存という関係は、依存症患者とその家族だけに見られるものではありません。親と子の間に共依存の関係が見られることもありますし、男女間に見られることもあります。
いわゆる「ダメ男」と、彼に尽くしてしまう女性の関係は、共依存の例としてよく挙げられます。どんなに辛くても、男のために尽くす女性は、彼に尽くすという行為に依存してしまっているのです。


『しょうがない 夢追い人』を初めて聴いたとき頭に浮かんだのが、この「共依存」という言葉でした。「私もダメになりそう」と彼との生活に疑問を感じながらも、結局は「それなのに あなたが好き」と言ってしまうこの曲の主人公は、彼女自身がどうしようもなく現在の関係に依存してしまっている、共依存の典型的なパターンに当てはまります。


ルポライター本橋信宏氏は、共依存の女性を扱ったルポ『殴られても好きな人』(宝島社刊『隣のサイコさん』所収)で、共依存の女性について次のように書いています。

僕は共依存の関係性は勝手にさせておくのが一番だと思う。はたから見れば不幸な関係かもしれないが、当人たちにとっては不幸の中の幸せなのだから。


これまで娘。はたくさんの幸せな歌を歌ってきました。切ない歌も歌ってきました。でも「不幸の中の幸せ」は、現在の娘。が初めて歌うことができたものではないかと、新曲を聴きながら思うのです。

しょうがない 夢追い人

しょうがない 夢追い人