プラチナ９DISC

プラチナ 9 DISC

アルバムを聴き終えたときにまず抱いたのは「クールだ」という感想。オープニングを飾る『SONGS』は、決してキャッチーとは言えないメロディーに、歌詞も冒頭は突き放したような雰囲気を持ったもの。ボーカルにもエフェクトがガンガンとかけられ、キュートさとかポップさを意図的に抑えているような印象が残ります。その感触はアルバム全体をとおしても感じられます。もちろん、調子乗りっぷりが微笑ましい小ＪＬの『グルグルJUMP』とか、光井さんの小憎たらしい可愛さが全開の『私の魅力に気付かない鈍感な人』とかキュートでポップな曲もあるんですけど、アルバム全体としてはクールな空気感が一貫して漂っているイメージ。そういえばアルバムでここまでマイナー調の曲が多いのって初めてじゃないかなあ？
以前、吉澤リーダー体制の娘。を「クール」と表現したことがあったのですけど、現在の娘。は楽曲の面でそれとも違うクールさを得ているように感じました。“媚びないクールさ”とでもいうのでしょうか、現在の娘。が楽曲面でなにをやろうとしているのか、それが明確に感じられるアルバムだと思います。

そして個人的にこのアルバム最大の問題作だと思うのが道重さんソロの『It's You』ですよ。イントロのセリフはちょっと苦笑ものではありますが、道重さんの声の持つコケティッシュな魅力を思いっきり引き出していると思います。シングルカップリングの『弱虫』よりは、こっちのほうが好みだなあ。歌詞に漂う淫靡さもくすぐったくてよいところ。
で、この曲の最後のフレーズで道重さんのボーカルがちょっと揺れてます。これって、もしかしたらアクシデント的に揺れてしまったものをそのまま活かしたんじゃないかとも思います。この揺れが、リードしているはずなんだけどどこかで怯えている女の子の内面を感じさせて実に素晴しいんじゃないでしょうか。