鉄よりつよいもの。(旧)

KKTのブログ『鉄よりつよいもの。』のはてなダイアリー時代(2004年から2017年まで)のアーカイヴです。新規更新はしません。現在は新しいブログ http://kkt.hatenablog.jp/ をたまに更新

制約と自由と

最近読んだある映画監督のインタビューで、次のような内容が話されていました。その監督の最新作は製作サイドである程度の設定や内容が決められた上で監督の依頼があったものなのですが、そうやって枠組みが決まっていると脚本を作る段階で普段なら安易だと思うようなこともやれてしまう、というのです。制約があることで逆に自由となれるというのを面白く感じたものです。
先日から大絶賛中のアルバム『☆☆☆』を聴いているとき、このインタビューの内容をふと思い出しました。8曲目の『I miss you』の一節「私 今、切なくて胸が苦しいよ」って、安易って言えばすごく安易なフレーズでしょ? 普通は「切なくて胸が苦しい」っていうのを直接でなく表現するために作詞家は技巧を凝らすわけですから。
ストレートにこのフレーズが使えちゃうのって、“月島きらり”という14歳の架空の少女が歌う歌という枠組みがあるからだと思うんですね。14歳の女の子の初めての失恋を歌うなら、感情をそのまま言葉にしても成立してしまう。
しかも、それを実際に歌うのは久住さん。久住さんの、まだ色の付いていない無垢さを感じさせる歌声で歌われるからこそ、この直接的な表現も白々しくならずに聴く者に伝わる。
このアルバムは絶妙なバランスの上に成立しているなあと、つくづく思わされるのです。