鉄よりつよいもの。(旧)

KKTのブログ『鉄よりつよいもの。』のはてなダイアリー時代(2004年から2017年まで)のアーカイヴです。新規更新はしません。現在は新しいブログ http://kkt.hatenablog.jp/ をたまに更新

至福

昨日のディナーショーについて1曲ずつ順を追って書こうと思っていましたが、いつまで経っても終わらなそうな気がしてきたのでそれはあっさり諦めます。


さて。
2年前のディナーショーで保田さん、稲葉さんが見せていたのは、攻め込むパフォーマンスだったと思います。カジュアルディナーショーというスタイルに演者側も観客も慣れていない中で、ステージから観る者の中に切り込んでいくように訴えかけるパフォーマンス。
対して今回は、引き寄せるパフォーマンス。カジュアルディナーショーというスタイルが定着したという状況の変化を受けて、本人たちもリラックスして、余裕を持った上でステージに上がり、会場内の空気を吸い寄せ、いつの間にかステージを中心に会場全体がひとつに包み込まれているようなイメージ。
MCで保田さんと稲葉さんの組み合わせは2年前以来という話をしていて意外に思いました。それほど、ふたりのコンビネーションは見事でした。このふたりだからできること、このふたりでしかできないことを、間違いなくふたりはしっかり見据えています。
今回のディナーショーについて、保田さん、稲葉さんともMCで何度か「挑戦」という言葉を使っていたのですが、私は「挑戦」というよりはもっと別の表現のほうがふさわしいような気がしています。ふたりなら、もっと気持ち良いところまでいけるから、そこまでいってしまおうという…なんかこう書くとエロっぽいけれど(笑)、戦いを挑むのではなく、もっともっと楽しめる、楽しませることができる領域まで至ろうという欲求。それがふたりを動かす力だったのではないか。そんなふうに思うのです。


バンドについても触れておこうと思います。
前回のピアノ+キーボード+ギターという編成から、ピアノ+ギター+パーカッションという編成に変化したバンド。竹本一匹氏のパーカッションは、リズムを刻むだけではなく、ウィンドチャイムをはじめさまざまなパーカッションを駆使することで、サウンドにカラフルな彩りを与え、キーボードが減ったことによるサウンドの薄さを感じさせませんでした。むしろ、パーカッションが加わることで、低域方向にも高域方向にもサウンドのレンジが広がったように感じています。
サウンドの核となる、アレンジもつとめた大阪哲也氏のピアノ。要所要所で空間系のエフェクトを効果的に使い、サウンドにバリエーションを加える吉川理氏のギター。オルガンやストリングスなど白玉系の音がなくなったことで音の隙間は多くなっているはずですが、その空間を埋めるのが保田さん、稲葉さんの歌声。それはまさに、シンプルに歌を聴かせるための伴奏でした。


1曲ごとについては書かないと言いつつ、ひとつだけ。
最後に歌われた『丸い太陽』で、ちょっとしたハプニングが発生しました。稲葉さんが2番の歌詞で歌いだしてしまい、ふたりともちょっと詰まったあと持ち直して数フレーズ歌ったのですが、そこで稲葉さんが「もとい!」と大きく手を振って演奏を止めました。「最後の曲なのにこんなの嫌」ということでもう1度始めから歌い直すことに。客席からは大きな拍手。恐縮がる稲葉さんでしたが、あのまま1曲通しちゃったら観ている側にも引っかかるものは残ったはず。曲を止めるというのも相当に勇気が要る行為だと思うのですが、あそこでやり直すっていう選択をした稲葉さんは絶対に正しいし、ちゃんとしたかたちで曲を聴かせてくれたっていう点では稲葉さんに大感謝です。


とにかく、今回のディナーショーを観終わって一番感じるのは、こんなすげえものを体験できちゃって良かったなあという、そんな想いです。