鉄よりつよいもの。(旧)

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ネムレナイトの感想など

保田さんが出演していた劇団大人の麦茶公演『ネムレナイト』も盛況のうちに千秋楽を迎えたようです。
観に行った当日に簡単に感想を書きましたが、改めてちょっと長めの感想を。


今回は「保田さんが出ている」という理由だけで、どんな劇団かも知らず、劇のあらすじすら知らずに観に行っていたので、もしかしたら苦手なタイプの劇かもなあとちょっと不安も感じていました。けど、客席に入ると流れていたのがはっぴいえんどの曲。あ、きっと大丈夫に違いないと思いつつ開演を待ったのです。


さて。


ここから、劇の内容に触れますよ。






大丈夫ですか?


大丈夫ですね?






舞台は地方の寺。そこにはエツロウ、ウサキチ、ミハルという3人の幽霊が居ついていた。ある日、都蘭(トラン)という少女の幽霊が新しく加わり、エツロウは寺に来ていた未亡人・タカコに一目惚れ。夫を失った寂しさに疲れ果てていたタカコは、なぜかエツロウの姿が見えるようになり、エツロウに誘われるように自殺。幽霊になったタカコはエツロウとベッタリで幸せそうだが、タカコの死が不審がられて刑事のヒデカツとカスカベがやって来る。ヒデカツは寺の住職・エッセイがタカコを殺したのではないかと疑い、事件が幽霊の仕業でないかと考えたエッセイは、幽霊を見ることのできる妹・椿を寺に呼び寄せる――
というお話です。
保田さん演じるタカコは、事件の発端であると同時に、新入りのタカコにほかの幽霊が身の上を話すという形で、観客にもそれぞれの背景が説明されるので、その意味でもこの劇ではキーとなる役どころです。
当日の感想にも書きましたが、劇の進行とともに次第に登場人物それぞれのつながりが明らかになっていきます。そしてそれによって、当初は単に面白かったり奇妙に見えただけのキャラクターが、深みを持って感じられるようになっていきます。
椿は、好意を持ったカスカベに対して異常なまでにその健康を気遣う言動を見せます。当初はそれは椿のエキセントリックさを表現しているだけに見えるのですが、実はエツロウはエッセイと椿の父であり、ウサキチとミハルは椿のかつての恋人で、3人とも椿の目前で悲惨な死を遂げていたという事実が明らかになると、好きな人が死んでしまうことを極度に恐れる椿の哀しさがそこには見えてきます。
物語は、エッセイの疑いも晴れ、都蘭とカスカベ、椿とヒデカツがそれぞれ結ばれることを予感させて幕を閉じます。コミカルでありながらハートウォーミングなストーリー。そしてそこには「過去に縛られるのではなく、今を生きること」が描かれていたと思います。
エッセイが椿を呼ぶ過程が不自然に思えたり、エッセイがセックスを嫌悪するという設定が物語の中で充分に描かれていないなど、気になる点がいくつかありましたが、非常に楽しめた舞台でした。もしいずれ再演されることがあれば、保田さんが出る出ないは別にして観に行きたい作品です。
また、大人の麦茶の俳優さんもみな素晴しく、大人の麦茶自体にも興味が出てきました。8月末から始まる大人の麦茶次回公演も、できれば観に行きたいと思っています。